WOOD HUB

Vol.3 押さえておきたい業務フロー

Posted:
2020.10.01.

店舗や作業所、倉庫といった非住宅用途の建物を木造で計画する場合に知っておかないと後々困ることがあります。ここでは木造に適した建物規模や設計条件、コスト感についてや、構造設計事務所との協業についてお話していきます。

實成:第3回の講座では、中規模木造の業務フローについて解説をしていきます。ここを押さえておかないとプロジェクトをスムーズに進めることができないので非常に重要です。住宅の場合だと工務店さんが意匠設計をして、プレカット工場に見積もりをもらうというシンプルな流れで進められます。<画像>

實成:それが非住宅になると、工務店さんがプレカット工場に見積もり依頼をしても「どうやって組んでいいか分かりません…」となり、見積もりができないんですね。それで、初期相談で構造屋を絡める必要があります。<画像>

實成:まず、構造屋さんに相談する(①)と、どういうふうにトラスや水平構面を組むかといった概算計画が返ってきます(②)。
次に、それを元に工務店さんはプレカット工場にざっくりとした坪単価の見積もり依頼をします(③)。そこで大まかな躯体費が分かるので、予算内で進められるかどうかの判断ができるようになります。
それで行けそうだとなったら、今度は構造設計者の構造計画を元にしてプレカット工場に仮伏せ図の制作を依頼し(④)、それが上がってきたら、工務店さんは納まりなどを見て、構造設計者は構造部分のチェックをしていきます。うちは構造事務所でありながらプレカット仮伏せ図の作成も行えますが、一般の構造事務所はプレカット工場に仮伏せ図を依頼するとスムーズだと思います。
仮伏せ図のチェックが完了したら、その後に意匠と構造の擦り合わせをして基本設計をまとめて(⑤)、それを元に概算見積もりを依頼します(⑥)。こうすることで躯体費をにらみながら設計を進めることができます。
その後に、実施設計をして(⑦)、最終見積もりを取るという流れです(⑧)。
一見複雑そうに見えますが、やり取りを繰り返しながら、だんだんと収斂させていくイメージですね。こうして、工務店、構造屋、プレカット工場の3者が連携をすると現場がスムーズに進んでいきます。たいていのプロジェクトは最初に予算がバチンと決まっているので、それに合わせられるかどうかというのが重要なんです。

村松:住宅と比べてやり取りの回数が随分と多くなるんですね。慣れないと難しそうです。

第1回~3回までのまとめ

實成:いったん今日の講座はここまでにします。
ここまで3回にわたって中規模木造を進める上で必要な知識をまとめてお伝えしましたが、もちろん構造設計を内製化する必要はありません。外部の専門家に頼めばいいんです。でも専門家に頼むにしても、何を頼めばいいかを知ってないと協業が難しいので、そのための基本的な知識や業務フローを紹介しました。
普段住宅をメインにやっている工務店や設計事務所の中でも、中規模木造を手掛けるところが少しずつ増えてきています。ぜひこの流れに乗り遅れずに、早めに取り入れるといいんじゃないかなと思います。
次は中規模木造でどのような建物がつくれるのか、具体的な事例と設計のポイントを紹介していきたいと思います。

村松:實成さん、ありがとうございました! 住宅と中規模木造でたくさんの違いがあることがよく分かりました。次回も楽しみにしています!

實成 康治

ウッド・ハブ合同会社 代表

大手集成材メーカーで大断面木造建築物の設計・施工に携わった後、接合金物のトップメーカーである(株)タツミで中規模木造対応の接合金物「テックワンP3プラス」を考案し開発を担当。施工現場、コスト、設計、製品開発を知っている構造設計が持ち味です。新しいものを考える事が何よりも好きな、根っからの開発者です。「木質構造の設計情報を共有する会」(通称:木構造テラス)の代表理事でもあります。

村松 悠一

住宅設計エスネルデザイン 代表

「暖かい小さな家」を提案している設計事務所です。住宅の仕事についてからずっと「良い家とはどんな家だろう?」と考えてきました。世界一周の旅を経て感じたのは、良い家とは「ゆとりのある家」。具体的に言えば、暖かく家族が健康であること。そして、家計にゆとりがあること。それを叶えるために、「超高断熱」の「小さな家」を提案しています。これからの時代(価値観)にあったこれからの家づくりを提案しています。